日本臨床細胞学会雑誌
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外陰に発生したpapillary hidradenomaの1例
本間 滋田中 耕平岡田 久児玉 省二小幡 憲郎半藤 保竹内 正七永井 絵津子
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1983 年 22 巻 2 号 p. 250-254

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抄録

症例は52歳の女性で, 腫瘤は左小陰唇外側にあり, 自潰し, 軽度の出血がみられたが, 周囲組織との境界は明らかで, また, 鼠径部リンパ節の腫大も認められなかった.
腫瘍表面からの擦過スメア所見で, 最も目立つのはシート状配列をなし, ライトグリーン淡染性で, やや広い多稜体の胞体をもつ細胞で, N/C比は中等度, 核は楕円形で, 細顆粒状のクロマチンを有し, 1-数個の核小体が認められた.また集合性, 重積性をなし, 比較的小型で, N/C比がやや大きい細胞や核が偏在し, 腺構造を窺わせる配列を示す細胞群もみられた.しかし, いずれも悪性を示す細胞とみられず, 良性のものと判断され, 局所麻酔下で単純切除を行った.
組織学的には, 単層-2層の円柱上皮より構成された大小さまざまの乳頭状-管状の腺腫様増殖像が主体で, 上皮に線毛は認められず, 胞体は好酸性で断頭分泌もみられ, papillary hidradenomaと診断された.
術後1年10ヵ月経過したが, 再発などの異常は認められていない.このまれな疾患は, 腺癌との鑑別が重要とされており, そのためには組織診断に際し, 細胞診所見を十分に参考にすることが有用であると示唆された.

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