日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
Endometrial stromal sarcomaの1例
畠 栄太田 節子鐵原 拓雄福屋 崇津嘉山 朝達中川 定明
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 23 巻 3 号 p. 461-466

詳細
抄録

75歳不正性器出血のため近医を受診し, 子宮内膜癌を疑われて当大学産婦人科に転院受診時, 著明な貧血がみられた.外陰部, 膣は異常なく子宮は前屈でこぶし大, 子宮膣部は全周性に著明な発赤を示していた.CTで膀胱背部に10cm大のhigh density massが認められた. 細胞診と組織学的検索を子宮膣部で行いendometrial stromal sarcomaが疑われた. 化学療法, 放射線照射により転快退院したが, その後下腹部膨隆をきたし再入院.腹水にも悪性腫瘍細胞が出現し全身衰弱, 呼吸困難をきたし, 昭和57年12月16日死亡.剖検はゆるされなかった.
子宮膣部擦過標本では, 出血性で少数の好中球, リンパ球を背景とするなかに, 小型の細胞が孤立散在性に認められた. 細胞質は乏しく, 境界はやや不明瞭.核は一部紡錘型のものがみられ, また一端が細長くなったいわゆるcomet cellを認めた. クロマチンは細顆粒状を呈し, 小型核小体を1~2個認めた. 腫瘍生検の捺印標本でもほぼ同様な像を示し, 腹水細胞診では小型, 類円形細胞が弱い結合性を示して出現していた.
組織像は未分化な子宮内膜問質細胞に類似した細胞がびまん性に増殖し, 特別の配列や構築はみられなかった.核分裂像も20/10HPF以上認められた.
以上の所見からendometrial stromal sarcomaと診断された.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top