日本臨床細胞学会雑誌
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大腸癌の細胞学的研究
古山 信明
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1985 年 24 巻 2 号 p. 157-164

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抄録

大腸擦過細胞診を施行した早期癌22例, 進行癌51例をPapanicolaou染色により細胞学的に検討し, 次の結論を得た.
1) 大腸早期癌細胞の核の大きさ (長径×短径) は, 進行癌細胞の核の大きさよりも有意に小型であった. 核の形態 (短径/長径) でも両者の問に有意差を認めた.
2) 進行癌細胞は, 早期癌細胞に比べ核の大小不同が強く, 核構造は多彩で, 核縁の不均等肥厚の率も高く, 核小体の増多が特徴的であった.
3) 早期癌細胞, 進行癌細胞に腺腫細胞を加え, その核の大きさ, 形態, 分布を検討した結果, 腺腫細胞の核のほとんどが楕円形を呈し, 早期癌では核が細長化して大きくなり, 進行癌に至るとさらに短軸方向へも大きさを増し類円形化するという悪性化に伴う核の変化の過程が推定された.
4) 細胞診での正診率は, 早期癌91%, 進行癌96%であった.診断成績を向上させるためには, 左半結腸では細胞の読みに注意を払うこと, 右半結腸では細胞採取を十分に行うことが必要である.
5) 大腸擦過細胞診は, 微小病変や生検の難しい症例では有力な診断法と考えられる.

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