日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部前癌病変におけるkoilocytotic atypiaの細胞, 組織学的検討
河西 十九三久保田 浩一石川 てる代岩崎 秀昭武田 敏高見沢 裕吉石川 明島岡 より子角 敏子吉田 美紀子
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1986 年 25 巻 1 号 p. 53-59

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抄録
1979年から1980年の2年間に千葉県対がん協会による集団検診で発見されたdysplasia 319例についてhuman papilloma virus (HPV) 感染による細胞変化であるkoilocytotic atypiaに着目し, 細胞学的, 組織学的に検索した.
1) 組織異型度別では軽度dysplasia群31/128 (24.2%), 中等度dysplasia群26/113 (23%), 高度dysplasia群13/78 (16.7%) に, 全体としては70/319 (21.9%) に組織学上, koilocytoticatypiaを認めた,
2) 年齢別には50歳以上では4例 (13.3%) と, 50歳未満に比較して頻度が低かった.
3) 酵素抗体法 (peroxidase antiperoxidase technique, PAP法) によるウイルス抗原の検出ではkoilocytosis, marked群で16例 (57.1%), slight群で14例 (42.4%), dysplasia群1例 (3.3%) とkoilocytosis群に有意に検出率が高かった.
4) 組織異型度別による細胞診上のkoilocytosisの出現頻度はkoilocytosis, marked群では12例 (40%), slight群では11例 (27.5%), dysplasia群では11例 (4.4%) とkoiiocytosis群で有意に高かった.
5) 細胞診上, koilocytosisが認められた17例のうち, 組織学的にウイルス抗原を証明できたものは12例 (70.6%) であったのに対し, 組織でウイルス抗原を証明した29例のうち, 細胞診でkoilocytosisを認めたものは12例 (41.4%) にすぎず, 細胞診によるHPV感染の診断は特異性にはすぐれているが感受性に問題があると考えられた.
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