日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺・双極裸核の本態と起源
超微形態学的および組織化学的所見を中心に
土屋 真一丸山 雄造小池 綏男山田 邦雄小林 康人東 靖宏加賀谷 昇
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1986 年 25 巻 4 号 p. 646-653

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抄録

乳腺双極裸核の本態と起源を知る日的で, 線維腺腫15例の穿刺・捺印細胞診標本を用いて, 酵素組織学 (adenosine triphosphatase, ATPase染色) 的, 超微形態学的に検索した.線維腺腫細胞診の背景に現れる細胞群は, おもに楕円形, 紡錘形および濃縮状円形核を有する3型に大別されたが, 双極裸核に相当するものは, 楕円形, 紡錘形の核をもつ細胞であり, 濃縮状円形核は, 変性によるものと考えられ, 双極裸核の範疇には入れがたいと思われた.筋上皮細胞に特異的なATPase染色では, 上記の細胞群には, 一部の例外を除き, 全く染色されなかった.超微形態学的に, 楕円形, 紡錘形の核をもつ双極裸核には狭小ながら細胞質が認められ, 小器官も, ミトコンドリア, 粗面小胞体, 遊離リボゾームが存在し, 線維芽細胞に類似していたが, 筋上皮細胞に特徴的な暗斑をもつ微細線維は認められなかった.これまで, 双極裸核は筋上皮細胞がその大部分を占めるとい'われているが, その本態の中心は線維芽細胞であり, 一部に筋上皮細胞と腺細胞を混じているものと解された.線維腺腫15例, 乳癌87例, 乳腺症21例の双極裸核の出現頻度は, それぞれ67.1, 24.3, 35%であった.

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