日本臨床細胞学会雑誌
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肝嚢胞穿刺細胞診により診断できた肝腺扁平上皮癌と肝嚢胞腺癌の各1例
松尾 武柴田 正則神原 昭吉牛尾 利裕川田 信吾五反田 照三
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1986 年 25 巻 4 号 p. 751-757

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抄録

肝嚢胞性病変に穿刺細胞診を行い, 診断できたまれな肝腺扁平上皮癌と肝嚢胞腺癌のそれぞれ1例を経験した.
肝腺扁平上皮癌の症例は, 72歳の男性で下血, 食欲不振, 腹部膨満を主訴とし, 腹部CT, エコー検査, 血管造影などより肝嚢胞性病変がみつかり, エコー下の穿刺吸引と組織生検が行われ腺扁平上皮癌と診断された.全経過6ヵ月で死亡し剖検された.剖検により肝原発の腺扁平上皮癌とわかり, 右肺下葉, 横隔膜, 右肺門リンパ節に転移がみられた.
肝嚢胞腺癌の症例は, 51歳の女性で左上腹部腫瘤を主訴とし, 腹部CT, エコー検査で肝嚢胞性病変がみられ, 腹腔鏡検査時に穿刺吸引と組織生検が行われ10wgradeの肝嚢胞腺癌と診断された. その後腹水や右胸水が貯留し, それらの細胞診検査でも同様の腺癌細胞がみられた.肝病巣は増大し周囲への浸潤も疑われるが2年6ヵ月後の現在, 生存中である.

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