日本臨床細胞学会雑誌
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体腔液細胞診で酵素抗体法が有用であった小型肺癌
鳥居 久二岸川 正大
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1986 年 25 巻 4 号 p. 784-788

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抄録

症例は76歳男性, 右上腹部痛を主訴として来院.胆石および胆嚢炎のほかに, 胆嚢癌が疑われたため入院.入院後6日目に呼吸不全と心不全のため死亡した.
病理解剖では腹水 (600ml), 胸水 (左350ml, 右640ml), 心嚢液 (500ml), 心臓と心嚢の癒着, 胆石などの所見はみられたが, 肉眼的には腫瘍性の病変はみられなかった.
心嚢液の細胞診で, 異型細胞を多数認め, Papanicolaou染色では, 悪性細胞と考えられたが肉眼的に腫瘍を認めなかったため, 悪性細胞か反応性中皮細胞か判定に苦慮した.しかし酵素抗体法でCEAおよびケラチンが強陽性であったので癌を強く疑い, 肺を5mm厚で連続cuttingしたところ, 左肺上葉に10×4mmの肺癌を発見することができた.
本例は剖検時の体腔液細胞診ではあっても酵素抗体法が有用であったことを報告した.

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