日本臨床細胞学会雑誌
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脳室腹腔シャント経由で腹膜転移を生じた視床部原始神経外胚葉性腫瘍 (PNET) の1例
特に腹水の細胞学的検討
園部 宏真辺 俊一岡田 雄平河合 凱彦山本 良裕山本 祐司
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1987 年 26 巻 6 号 p. 1130-1134

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抄録

脳室腹腔シャント経由の腹膜転移を生じた視床原発原始神経外胚葉性腫瘍 (PNET) の1例で, 腹水細胞診を行い, 免疫細胞学的検討をも加えたので報告する. 患者は嘔吐と意識低下をもって発症した1歳1ヵ月の男児で, CTにて水頭症と右視床に嚢胞化を伴う径4cmの腫瘍が判明し, 腫瘍の部分切除, シャント造設およびCo照射を行ったが, 全身状態の悪化と腹水貯留をきたし, 1年10ヵ月後に死亡した. 剖検で, 脳には壊死巣ないし出血巣を伴う充実結節性の腫瘍が脳室全体に増殖し, 腹膜にも大小結節状の転移性腫瘍が多数みられた. 組織学的には脳および腹膜腫瘍とも, もっぱら小型未分化腫瘍細胞の密な増殖よりなっていたが, さらに脳ではごく一部に海綿芽, 乏突起芽あるいは上衣芽腫様の像もみられた. 腹水細胞診では, 腫瘍細胞はきわめて未分化で小型未分化肺癌に類似した像を示した. 免疫染色結果は, 腫瘍組織のパラフィン切片の結果と同様で, GFAには陰性であったが, 一部の腫瘍細胞がS-100, NF, NSE陽性であった. これらの所見は, 本腫瘍が多分化能を有する未分化細胞に由来することを裏付けるものであった.

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