日本臨床細胞学会雑誌
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AIDSに合併したpneumocystis carinii肺炎の診断における喀痰細胞診の有用性についての検討
馬嶋 恵子小金井 真理子中沢 久美子設楽 保江船田 信顕小池 盛雄
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1989 年 28 巻 3 号 p. 372-377

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抄録

AIDS患者に合併するpneumocystis carinii (PC) 肺炎の早期診断における喀痰細胞診の有用性について, 細胞診が施行されたAIDS患者10例を対象に, それらの剖検肺組織所見との対比, さらにはPC肺炎を合併した血液疾患症例9例との比較を加え検討した.
1) AIDS患者10例中1例は気管支肺胞洗浄液により, 他9例は自然喀出の喀痰によりPCが検索された.気管支肺胞洗浄液1例, 喀痰7例においてPCが検出され, 喀痰での検出率は9例中7例と高率であった.
2) PC陽性の気管支肺胞洗浄液と喀痰のPapanicolaou染色においてlight green好性の泡沫状物質が特徴的に認められた.この物質はPC肺炎合併剖検例肺組織における肺胞内浸出物に対応するものであることが明らかとなった.またPCの嚢子はeosin, まれにlight greenに淡染する輪状の物質として認められ, 泡沫状物質の所見とあわせて注意深く観察すればPapanicolaou染色においてもPCの存在を予測することが可能と考えられた.
3) 対照としたPC肺炎併発血液疾患症例9例においては, 全例細胞診によりPCが検出されているが, 9例中8例の患者では喀痰の喀出がほとんど認められず気管支肺胞洗浄液によりPCが検索・検出された.喀痰連続検査によりPCが検出された症例は1例のみであった.
以上の結果から, 血液疾患などに合併した症例においては問題が残るものの, AIDS患者に合併するPC肺炎の場合は誘発法, 集シスト法を用いない自然喀出の喀痰により高率に診断し得ることが明らかとなった.

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