日本臨床細胞学会雑誌
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カンジダ膿瘍における塗抹標本作製の有用性
2症例報告
木村 雅友前倉 俊治門田 永治尾鼻 康朗酒谷 邦康
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1989 年 28 巻 3 号 p. 455-458

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抄録

酵母様真菌の一つであるカンジダは口腔や膣などの常在菌であるが, 日和見感染として内臓諸臓器に膿瘍を形成することがある.この膿瘍内でのカンジダ形態の観察には, 組織標本よりも塗抹標本の方が優れていることを播種性深在性カンジダ症の2剖検例を用いて報告した.症例1は急性骨髄性白血病の再燃例で剖検では肺, 肝, 腎, 脾にカンジダ膿瘍が, 左心内膜にはカンジダ疵贅が認められた.症例2は急性心筋梗塞後の昏睡例で, 剖検で両側の腎と左心室前壁にカンジダ膿瘍が認められた.2例ともに膿瘍の組織標本ではカンジダが密に増殖していたり, 炎症細胞に囲まれていて, 真菌形態を観察しづらかったが, 塗抹標本ではカンジダに特徴的な仮性菌糸と出芽分生子が明瞭に観察できた.塗抹標本は新鮮材料からとホルマリン固定後の膿瘍組織から作製したものを比較したが, いずれでもカンジダ形態の観察は組織標本よりも容易だった.
ホルマリン固定にかかわらず, 膿瘍の塗抹標本をつくることは有用であると考えられた.

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