日本臨床細胞学会雑誌
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高分化型子宮体部腺癌の内膜吸引細胞像について
米本 行範和田 裕一那須 一郎亀 セツ子鈴鹿 邁手塚 文明矢嶋 聰伊藤 圭子東岩井 久
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1990 年 29 巻 1 号 p. 16-20

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抄録

分化型体部腺癌の細胞所見を検索するために, 分化型腺癌10例, 低分化型腺癌6例, 非癌 (内膜増殖性病変を認めずかつ最近子宮内操作をうけていないもの) 20例の子宮内膜吸引細胞像を比較検討し, 以下の結果を得た.
(1) 分化型例で低分化型例と比べ出現頻度の低かった所見は, 細胞の乳頭状配列・顆粒状クロマチン・赤色肥大核小体・核小体周囲の透明化像などであった.
(2) 分化型例では, 低分化型例と比べ, 核の増大と大小不同が軽度のものが多く, なかには核の増大がほとんどないものもあった.
(3) 分化型例でも, 低分化型例と同様に,(4) で述べるクロマチン所見とともに核重積性と核縁不整が高頻度に認められた.
(4) 分化型例と低分化型例で例外なく認められ, 非癌例でほとんど認められない所見は,「クロマチンが核内に密に充満すること」および「クロマチンの不規則凝集像がみられること」であった.
以上の所見の中で,(1),(2) は分化型腺癌を悪性と判定するために有用とはいいがたいが,(3),(4) は分化型腺癌を悪性ないしは悪性疑いとしてチェックアップするために有用な所見と考えられた.子宮内膜吸引細胞診では, これらのことに留意し分化型体部腺癌の検出に努める必要がある.

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