日本臨床細胞学会雑誌
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睾丸悪性リンパ腫の1例
太田 秀一九島 巳樹風間 和男津田 祥子鈴木 孝夫斎藤 多紀子
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1990 年 29 巻 6 号 p. 898-902

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抄録
睾丸原発の悪性リンパ腫の1剖検例を経験した. 陰嚢穿刺吸引細胞診では, セミノーマを疑ったが睾丸の手術材料で混合細胞型の悪性リンパ腫と診断された. 細胞診でセミノーマ細胞とリンパ腫細胞をいかに鑑別するかを検討したので報告した. 症例は82歳の男性で熱発および右陰嚢腫大を主訴として入院.入院時, 表在のリンパ節の腫大はない. 右陰嚢は鵞卵大に腫脹しており, 穿刺吸引細胞診では大型の円形細胞と小型のリンパ球様細胞が, 結合性なくみられた. 当初はセミノーマを疑ったが, 睾丸摘出材料でびまん性混合細胞型の非ポジキンリンパ腫, Bcelltypeと診断された.剖検で, リンパ腫細胞の浸潤を左睾丸, 心臓, 大腸, リンパ節 (左鎖骨窩, 気管周囲, 腸間膜) に認めた.
セミノーマと混合細胞型非ポジキンリンパ腫の細胞診での鑑別上重要な点は, セミノーマでは一部に集合性がみられ, 大型の腫瘍細胞とともに小リンパ球がみられる. それに対し悪性リンパ腫では大型のリンパ腫細胞と中型のリンパ腫細胞がみられる. また高齢者の睾丸腫瘍では悪性リンパ腫の方が頻度が高いこと, 免疫染色が有効であることなどである.
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