日本臨床細胞学会雑誌
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Fibrolamellar hepatocellular carcinomaの1症例
林田 蓉子長浜 純二横山 繁生寺尾 英夫多田 出
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1991 年 30 巻 1 号 p. 126-130

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抄録

症例は56歳男性で肝硬変症の合併, α fetoproteinの軽度上昇が認められた. 肝尾状葉に1cm大, 左葉に2cm大の腫瘍が認められ, 組織学的に前者はFibrolamellar hepatocellular carcinoma, 後者はEdmondson I~IIの通常の肝細胞癌であった. 捺印細胞診でFibrolamellar hepatocellular carcinomaの細胞は大型多角形で, 著明な好酸性顆粒状の細胞質を有し, 細胞結合は疎で散在性に出現していた. 細胞質にはpale bodyや球状硝子体, 胆汁色素も認められた. 核はほぼ円形で, 中心性ないしは偏在性で, 核増大, クロマチンの増加と不均等分布, 著明な核小体, 核内細胞質封入体などがみられ, 明らかな異型性を示した. 腫瘍細胞間には線維細胞が介在し, 多核腫瘍細胞や裸核細胞も散見されたが, 核分裂や壊死細胞は認められなかった. 細胞学的には腫瘍は線維性被膜を有し, 結合織で分葉されていた. 腫瘍細胞は細胞診でみられたものと同様であったが, 細胞間に層状構造をとる線維束が介在していた.術後3年で, 右葉2ヵ所にEdmondson II~IIIの肝細胞癌の再発が認められたが, 再手術後6ヵ月を経過して, 再発は認められていない.

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