まれな甲状腺腫瘍である硝子化索状腺腫を経験したのでその穿刺細胞像ならびに病理組織学的, 電顕的および免疫組織化学的所見について報告する.
症例は38歳女性で, 甲状腺腫瘤の穿刺細胞診にて異型の少ない短紡錘形細胞ではあるが, 核内偽封入体, 核溝を有した細胞が認められたため, 乳頭癌を疑われ, 切除手術が施行された. 切除材料の組織学的検索では, 短紡錘形の細胞が索状に配列し, アミロイド様の間質を伴う像を認め, 電顕的には核内偽封入体, 多量の細胞質内フィラメント, 肥厚した基底膜様構造がみられ, 硝子化索状腺腫と診断した.
細胞診上, 硝子化索状腺腫を正診することは容易ではないと思われるが, 乳頭癌と髄様癌の両者の類似像を得た際は, それを鑑別診断にあげる必要があるものと思われた.