日本臨床細胞学会雑誌
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子宮体部ミューラー管混合腫瘍の細胞像
細胞診標本の光顕および画像解析システムによる検討
泉 貴文下田 隆夫林 玲子蔵本 博行大野 英治
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1992 年 31 巻 6 号 p. 957-965

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抄録

当科では, 開院以来現在までに中胚葉性混合腫瘍2例, 癌肉腫2例を経験した. 当初細胞診では, いずれも低分化型腺癌と診断されており, 組織像を正しく推定することはできなかった. そこで, その細胞像の再検討を行った. 細胞出現パターンは, 重積性 (腺癌部分) と孤立散在性 (肉腫部分) を示し, 核の所見には, 両者間で差がみられ, 特に孤立散在性に出現する細胞は, 重積性に出現する細胞を凌ぐ異型性を示していた. さらに大型の裸核状異型細胞の出現は, 本腫瘍の細胞診診断のうえでポイントとなるものとの印象を得た. そこでさらに, 画像解析システムIBAS-1を用いて, 最近経験した3症例およびG3体癌の重積性部分, 散在性部分の細胞の核面積をおのおの100個計測し比較検討した. 重積性部分では, ミューラー管混合腫瘍の核面積はいずれの症例でもG3体癌より大きかった. 核の大小不同性を表す変動係数は1例が高値を示していたが, 他の2例では, G3体癌と大差なかった. 散在性部分でも, ミューラー管混合腫瘍の核面積はG3体癌よりも大きかったが, その傾向は, 重積性部分よりも強く出ていた. 変動係数については, 重積性部分と同様に, 例が高値を示 していたが, 他の2例では, G3体癌と大差はなかった. 以上の結果より, 腫大細胞の出現ことに孤立散在性に出現する大型細胞のそれは, ミューラー管混合腫瘍においては特徴的であり, G3体癌との鑑別のポイントになると思われた.

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