原因不明の脳圧充進で発症し, のちに肺癌による癌性髄膜症と判明した症例を経験したので報告する. 患者は56歳女性. 著明な脳圧充進症状を認めたが, 臨床的に悪性腫瘍は認められなかったため, 偽性脳腫瘍としてV-Pシャントが施行された. 髄液中に孤立散在性に出現する異型大型円形細胞を認めたが, V-Pシャントにより刺激された脳室上衣細胞あるいは脈絡膜細胞と考えた. ところがその後, 右肺上葉に腺癌が発見され, また髄液中CEA値上昇が認められた. そこで髄液細胞に免疫染色を施行したところ, CEA陽性, Keratin陽性を示したため, 最終的に肺腺癌による癌性髄膜症と診断された. 剖検の結果, 肺原発巣は中分化乳頭状腺癌であったが, 髄膜浸潤巣では結合性のない低分化腺癌の像を示していた. 原発巣, 転巣ともに腫瘍細胞は免疫組織化学的にSurfactant apoprotein陽性を示し, 肺癌の転移であることが確認された.