1994 年 33 巻 6 号 p. 1160-1164
上皮様結合を示す腫瘍細胞集塊が出現したために, 捺印細胞診による組織型の推定診断が困難であった子宮体部平滑筋肉腫を経験した. 症例は34歳, 1回経妊未産の女性で, 月経不順, 立ち眩みなどを主訴に来院し, 子宮筋腫を指摘され, 手術目的で入院した. 術中迅速組織診にて悪性と診断, 摘出標本からの捺印細胞診が施行された. 腫瘍細胞として, 上皮様結合を示し乳頭状に配列する腺癌様細胞と, 孤立散在性に出現する紡錘形細胞や巨細胞の肉腫様細胞が認められたため, 当初ミュラー管混合腫瘍を考えた. しかし, 免疫細胞化学的に腺癌様細胞ならびに肉腫様細胞はデスミン, ビメンチンおよび平滑筋アクチンがいずれも陽性であり, ミオグロビン, CEA, EMAおよびSCがすべて陰性であったことより, これらの腫瘍細胞は同一系統で平滑筋由来であると判断した. パパニコロー標本を再検討した結果, 腺癌様細胞と肉腫様細胞は核縁が薄いことやクロマチンが細かい点で類似性が認められた. 以上より, 平滑筋肉腫の捺印細胞診では, 腫瘍細胞が集塊で出現する場合もあるため, 核縁およびクロマチンパターンなどの所見を総合して組織型の推定を行うことが重要であると思われた.