日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺硝子化索状腺腫の1例
尾崎 聡渡辺 騏七郎川畑 圭子石山 進
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1995 年 34 巻 1 号 p. 54-57

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抄録

甲状腺穿刺吸引細胞診で乳頭癌と判定したが, 術後の組織診断で甲状腺硝子化索状腺腫 (hyalinizing trabecular adenoma. 以下HTA) と判明した1例を経験した.
HTAは1987年Carneyらによって提唱された特異な像を呈するまれな良性腫瘍で, 現在, 濾胞腺腫の特殊型の一つとして位置づけられているものである. この腫瘍の組織診断においては乳頭癌, 髄様癌などとの鑑別が問題となる. 本例のHTAの組織診断は, 提唱者であるCarneyによってもまた確認を受けたものである.
本症例の穿刺吸引細胞診像では, 乳頭状の細胞集塊が多数採取され, 甲状腺乳頭癌に特徴的とされてきた核内封入体や核溝所見がよく認められた. 穿刺吸引細胞診では乳頭癌とHTAの鑑別は現在. 一般的には困難であると考えられており, 事実われわれも乳頭癌とみなした.
今回, 本例の穿刺吸引細胞像と乳頭癌例のそれとを比較検討した. その結果, 本腫瘍の穿刺吸引細胞診像の乳頭癌との鑑別上の特徴として, HTAでは, うねるように流れるケバだった細胞集団構造, 紡錘形の孤在細胞や裸核の出現, 細胞集団に付着するライトグリーン好染性の肥厚した基底膜様物質の出現があげられるのではないかと考えられた. 穿刺吸引細胞診において以上のような所見を認めた場合, HTAである可能性を考慮する必要があると思われた.

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