日本臨床細胞学会雑誌
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原発性硬化性胆管炎の1例
その細胞学的検討
古旗 淳中村 眞二村田 弥恵子清水 忠典林田 康男権田 厚文沢田 好明
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1995 年 34 巻 1 号 p. 81-86

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抄録

原発性硬化性胆管炎 (PSC) は, 臨床的に胆管癌との鑑別がしばしば困難である. われわれは著明な異型細胞を認めたPSCの1例を経験したので, その細胞像と癌との鑑別点について検討した. 症例は54歳女性. 肝機能障害, 肝内胆管拡張症で当院に入院し, 画像診断などでPSCが疑われた. 症状軽快により一旦退院するも, 胆管炎症状が出現し再入院した. 黄疸および肝内胆管拡張と総胆管狭窄の進行がみられた. 2回目入院時, CA19-9は515U/mlと高値を示し, また, 胆汁細胞診で乳頭状の核小体著明な異型細胞集塊がみられ, 胆管癌も否定できなかったため数回にわたり内視鏡下でブラッシング細胞診を施行した. 一時細胞は, 重積性や核の大小不同, 大型の核小体などの著しい異型を示した. 経皮経肝的胆管鏡 (PTCS) 下での生検組織は著明な線維化がみられ悪性所見は認められなかった. 胆汁細胞診での癌との鑑別は容易ではないが, ブラッシング細胞診により強い異型は炎症に伴う変性所見と考えられ癌は否定された. また, より確実なPSCの診断には胆汁細胞診のみでなく, 明瞭な核内所見の得られるブラッシング細胞診の積極的な施行と, これらの頻回の検査が重要と思われた.

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