日本臨床細胞学会雑誌
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異型上皮過形成を伴う乳腺Mucocele-like tumorの1例
所 嘉朗上山 勇二鬼頭 邦吉奥田 克子中村 栄男栗田 宗次市原 周越川 卓
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1995 年 34 巻 6 号 p. 1128-1132

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抄録

異型上皮過形成を伴うMucocele-liketumorの細胞像および組織像について報告する. 症例は46歳の未婚女性で, 穿刺吸引細胞診上, 粘液癌を否定できないため生検組織診 (incisionalbiopsy) が行われた. 組織診では乳管内粘液貯留, 間質への粘液の漏出, さらに拡張乳管を覆う上皮の一部に低乳頭状の異型過形成を認めた. しかし粘液に浮遊する上皮は認めなかった. その後, 単純乳房切断術を行い組織学的にさらに検索したが, 生検標本とほぼ同様の所見で, 明らかな浸潤癌は認められず, Mucocele-liketumor (Rosen) と診断した. 乳腺の穿刺吸引細胞診で背景に豊富な粘液をみる場合には, 従来強調されていた粘液癌のほかにMucocele-liketumorの可能性も考えるべきである. Retrospectiveに細胞診材料を検討すると, 粘液の粘稠度が低く, 上皮細胞がきわめて少ない点で, 通常の粘液癌の所見と異なっており, 両者はある程度鑑別可能である. しかしながら, 最近の文献では, Mucocele-liketumorのカテゴリーの中にも, われわれの経験した症例と類似した良悪境界病変も報告されている. したがって細胞診上, Mucocele-liketumorが強く示唆される場合でも, 組織標本による十分な検索を省くことはできない.

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