日本臨床細胞学会雑誌
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エンドサイト法における子宮内膜増殖症の立体構築の特徴について
山田 昭二清田 秀昭工藤 玄恵清川 真理子横山 明子芹沢 博美海老原 善郎岡部 一祐
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1996 年 35 巻 3 号 p. 193-197

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抄録

本研究の目的は, 子宮内膜の細胞集塊を立体構築的にみて増殖症にはどのような特徴が有り, それがどの程度診断に役立つかを検討することである. 対象はエンドサイト法, 直接塗抹にて得られた, 正常内膜40例 (24~76歳, 平均48歳) と腺腫性および異型増殖症28例 (40~58歳, 平均48歳) である. 判定は, 裂隙形成集塊あるいは乳頭状集塊の出現の有無, それら集塊における問質成分の有無と最外層核の位置について検索を行った. 正常内膜の集塊には3層以上の重積のある乳頭状集塊で複雑な乳頭状分岐が作り出す “すきま” を持つ集塊あるいは分岐のない単純な乳頭状集塊は認めず, 間質成分, 内膜上皮, 内膜腺が種々の程度に混在する集塊として認めるか, おのおの単独に認められた. 増殖症では10例 (36%) に裂隙形成集塊あるいは乳頭状集塊を認めた. そのうちの9例は集塊周囲に少量の間質成分を伴い, 最外層の核が間質側に偏在している集塊 (以下, 集塊の外側), つまり粘膜固有層内にとどまる増殖を示唆する集塊が認められた. また集塊周囲に問質成分を欠き, 最外層の核は内側に位置している集塊 (以下, 集塊の内側), つまり子宮内腔および腺腔内へ突出する増殖を示す集塊は3例に認められた.
われわれは以前に, 高分化内膜腺癌では子宮内腔へ乳頭状突出を示唆する集塊が得られやすいという報告をしたが, 本検索において増殖症では粘膜固有層内にとどまる増殖を示唆する集塊の出現する割合が高いという特徴が得られたと考える.

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