卵巣未熟奇形腫5症例の捺印細胞像の検討を行った.卵巣を対象とする細胞診は, 病期の決定のために腹水や腹腔内洗浄液に対して主として施行されているが, われわれはさらに術中に卵巣捺印細胞診を行い, 腫瘍の組織型, 悪性度を類推し, 組織診が確定するまでの治療方針の決定, および組織切片の切り出し部位の選択にもその情報を活用している.われわれが経験した未熟奇形腫症例では, 特に捺印細胞診からの情報が腫瘍の正確なgradingを行う上で有用であった.未熟奇形腫の構成成分中, 特に悪性度の判定上重要視されている未熟な神経細胞は剥離性が高く, 捺印細胞診標本中に各腫瘍の悪性度に比例した数が出現しており, その細胞像は細胞境界不明瞭, N/C大, 微細で増量した核クロマチンを持つ小型異型細胞で, 容易にスクリーニングで確認できる細胞であった.