日本臨床細胞学会雑誌
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体腔液細胞診材料におけるテロメラーゼ活性の検討
吉見 直己井野 夏子高橋 京子戸島 敏新井 正安田 洋田中 卓二
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1997 年 36 巻 1 号 p. 76-80

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抄録

テロメラーゼは細胞の老化や不死化に関わる重要な細胞内リボ核蛋白質である.近年, テロメラーゼ活性の測定がpolymerase chain reaction法を利用した簡便な方法で可能となった.今回, われわれは体腔液材料でのテロメラーゼ活性の測定とその有用性を調べるため, 培養細胞でのテロメラーゼ活性の測定限界を検討するとともに, 実際の58サンプル (42症例) の体腔液材料を用い, 以下の結果を得た.
1) 大腸癌培養細胞COLO320でのテロメラーゼ活性陽性の限界は20~50個であった.
2) 正常白血球との混合希釈液では, 癌細胞の含有1%までに検出可能であった.
3) 58サンプル中17サンプルでテロメラーゼ陽性であった.細胞診判定を基準とする鋭敏度 (sensitivity) は69%(9/13) であり, 特異性 (specificity) は87.5%(28/32) であった.
4) 悪性腫瘍症例29例の内, 細胞診での陽性は11例で, テロメラーゼ活性の陽性は15例に認められた.細胞診・テロメラーゼ両者を併用すると21症例 (72.4%) が陽性となり, 陽性率が高まった.
以上, テロメラーゼ活性の測定は体腔液の細胞診標本作製後の残りで可能であり, 臨床病理学的診断の補助的利用に有用と考えられた.

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