日本臨床細胞学会雑誌
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画像解析装置を用いた膀胱カテーテル尿の細胞学的検討
特に良性疾患と移行上皮癌Grade 1の鑑別所見について
服部 学大野 英治横山 大小林 明子豊永 真澄柿沼 廣邦大部 誠内田 豊昭蔵本 博行
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1997 年 36 巻 3 号 p. 293-298

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抄録

カテーテル尿中には, 良性であってもカテーテル挿入時の刺激により癌の特徴の一つである乳頭状増殖を思わせる細胞集塊が出現する.このため, 良・悪性の鑑別が困難な症例も少なくない.そこで, 組織診にて良性疾患 (慢性炎症) とされた10例と移行上皮癌 (G1=6例, G2=22例, G3=7例) とされた35例の膀胱カテーテル尿の細胞診について画像解析装置を用いて解析し, 特に組織学的異型度が軽度なG1移行上皮癌に対する診断基準の確立を試みた.その結果, 良性疾患とG1移行上皮癌を比較するとN/C比, 核面積および核大小不同性では有意差は認められなかったものの, 細胞面積および細胞大小不同性では良性疾患は小型から大型まで多彩な細胞が出現していたのに対し, G1移行上皮癌では小型で均一な細胞の出現が確認された.さらに, G1移行上皮癌は良性疾患に比べ核密度が有意に高い細胞集塊が特徴であった.以上より, 良性疾患とG1移行上皮癌の鑑別には出現する細胞の大きさ, 均一性ならびに核密度に注目することが重要であり, これを診断基準に加えることで良性疾患とG1移行上皮癌の鑑別は可能であると思われた.

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