日本臨床細胞学会雑誌
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細胞集塊の形状の凹凸度指数による甲状腺乳頭癌と良性疾患の鑑別
丸田 淳子山下 裕人野口 志郎
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1999 年 38 巻 3 号 p. 226-230

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抄録

甲状腺穿刺吸引細胞診の所見の判定における客観化の一助として, 細胞集塊の周縁部の凹凸度を指数化して検討した. 乳頭癌20例, 濾胞腺腫20例, 腺腫様甲状腺腫20例からおのおの10ヵ所以上の細胞集塊の面積および周囲長をcomputerで計測し, それらから細胞集塊の周縁部の凹凸を表す指数 (凹凸度指数=2-1×(π×面積) -0.5×周囲長) を求めた. 乳頭癌の平均細胞集塊面積および平均周囲長はそれぞれ2970μm2, 376μmであり, 濾胞腺腫, 腺腫様甲状腺腫より大きい傾向にあった. 乳頭癌の平均凹凸度指数は2.02±0.09 (mean±s.e.) であり, 濾胞腺腫および腺腫様甲状腺腫に比して, 高度な有意水準で差を認めた. 症例内の集塊形状の多様性を表す標準偏差も, 乳頭癌で1.4±0.1と最も大きかった. 本検討症例集団でのLogistic回帰分析による乳頭癌である確率は, 凹凸度指数が2.2以上の細胞集塊であれば90%以上であった. odds ratioでは, 指数が0.1大きくなると乳頭癌のoddsは1.96倍大きくなった. 凹凸度指数は, 値が大きいほど乳頭癌である確率が高く, 同疾患を判定する際の補助的手段に利用できると思われた.

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