日本臨床細胞学会雑誌
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腫瘍径1cm以下の小さな子宮体癌の細胞診
子宮体癌の早期発見のために
杉山 裕子平井 康夫南 敦子都竹 正文荷見 勝彦
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1999 年 38 巻 5 号 p. 379-384

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抄録

腫瘍径1.0cm以下の小さな子宮体癌の細胞診および組織診所見の特徴を検討することで, 発見の難しい早期子宮体癌発見の手がかりを細胞診上みつけることを目的とした.
1986~1992年の7年間に, 癌研究会附属病院婦人科で, 手術が施行された子宮体癌367症例中, 腫瘍径1.0cm以下の小さな癌で, 細胞診, 組織診ともに検討できた46症例を対象とした.細胞診は, 増淵式吸引スメア法, 組織診は細胞診と同時期に施行された内膜生検標本および, 手術標本を検討した. 手術標本は, 全例で子宮体部全割標本を作成し, 腫瘍径1.Ocm以下であることを確認した. 臨床背景も検討した.
1) 対象症例の年齢は42~75歳 (中央値53歳) で, 手術進行期分類 (FIGO1988年) は, Ia期19例, Ib期15例, Ic期1例, IIa期1例, IIIa期10例であった. 子宮体部全割標本による最終組織診断は, 類内膜腺癌G1: 34例, G2: 5例, G3: 3例, 腺扁平上皮癌1例, 腺棘細胞癌1例, 漿液性腺癌2例であった. 2) 初回細胞診で, 疑陽性以上と診断されたのは, 46例中32例 (70%) であった. 初回組織診で子宮体癌と診断されたのは, 46例中33例 (72%) であった. 3) 初回細胞診を再検討した結果10例が誤陰性であり, 46例中42例 (91%) が疑陽性以上となった. 4) 誤陰性10例の内訳は, 類内膜腺癌G1: 6例, G2: 1例, G3: 2例, 漿液性腺癌1例であった. G1症例以外は少数ではあるが癌細胞が出現しており, 陽性と診断できた. G1症例6例には, はっきり陽性とは診断困難だが, 疑陽性とすべきだった所見を認めた. その細胞所見の特徴は, 乳頭状に増殖し胞体が合胞状に出現し, 軽度ではあるが核異型を伴い, 集塊中に好中球のとり込みを認めることであった.
細胞診上, 乳頭上に増殖し胞体が合胞状に出現し, 軽度ではあるが核異型を伴い, 集塊中に好中球のとり込みを認める細胞集塊の出現に注意すれば子宮体癌の早期発見に役立つ.

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