日本臨床細胞学会雑誌
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気管支擦過細胞診標本中の蓚酸カルシウム結晶が真菌発見の契機となった肺アスペルギルス症の1例
原 喜与一吉岡 高広桂 栄孝里中 和廣
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1999 年 38 巻 5 号 p. 431-435

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抄録

気管支擦過および気管支洗浄液細胞診標本において多くの結晶成分が認められ, それが契機となって肺アスペルギルス症の確定診断ができた症例を経験したので報告する.
症例は64歳男性・糖尿病. 咳, 発熱, 血疾があり胸部X線写真で肺結核が疑われ, 入院治療開始したが増悪傾向となり気管支鏡検査が施行された.気管支擦過細胞診標本では, 異型細胞・真菌などの異常物質は認められなかったが, 針状結晶を束ねたような無色のバタフライ状~ ロゼット状, 松葉状の結晶を多く認めた. 結晶は偏光顕微鏡下において重屈折性を示し, 組織化学的に蓚酸カルシウム結晶であることが推定された. 以上の所見より, 真菌の存在が疑われ再度気管支鏡検査を施行した結果, 真菌菌糸が検出され, 培養でAspergillusnigerと同定された. さらに, 培養培地にて細胞診標本と同一の形態, 化学的性状を示す結晶の産生を確認した. 呼吸器細胞診標本における蓚酸カルシウム束状様結晶の検出は, 菌糸が認められなくてもアスペルギルス感染を疑うべき重要な指標になると考えられた.

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