日本臨床細胞学会雑誌
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胞体内に結晶様封入体を有した肺のlarge cell carcinomaの1例
金室 俊子野並 裕司西川 俊郎笠島 武相羽 元彦河上 牧夫
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2001 年 40 巻 3 号 p. 272-275

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抄録

背景:肺の原発腫瘍の細胞像は今日, 腺癌, 扁平上皮癌, 大細胞癌, 小細胞癌, 肉腫などが主たる判別項目になっている. これらは核の所見を主として判定し, 細胞質の多様性に関しては補助的な意味が付与される程度に止まることが少なくない. 今回, 胞体内に封入体を有するまれな肺癌の1例を経験したので報告する.
症例:36歳の男性で, 主訴は喀痰, 咳, 倦怠感. 肺出血の診断で入院, 肺出血に対し右上葉切除術が行われた. 肺実質のびまん性出血と胸膜下の多発性bulla形成および腫瘍が認められ, 腫瘍は, S・, S・域に直径20mmの周縁不整で溢血を伴っていた. 細胞学的に腫瘍細胞は, 小型~中型でクロマチン増量, 核形不整, 核小体の肥大のほか泡沫状の細胞質に加えて半透明状の結晶様封入体を有していた. 組織学的には, 特定の構造は持たず, 血管に富み, 一部紡錘状の集籏を成す. 胞体内には無数のslit状~玉葱状で半透明のcrystaloid inclusionを有していた. 電顕所見では, 核膜下ヘテロクロマチンの増加する不整形の核で胞体には電子密度を欠きcrystaloid inclusionを認めた.
結論:細胞診ならびに組織像で認められた腫瘍細胞内封入体は, 電顕所見より扁平上皮系未分化細胞などに多いcholesterin系微結晶などの特殊アルキル化合物の可能性が示唆された. 悪性腫瘍の細胞診観察に際しては胞体内の所見にも注目する必要があると考えられた.

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