2002 年 41 巻 4 号 p. 278-280
背景:男性乳腺に発生したinvasive micropapillary carcinoma (以後IMPと記す) を経験したので報告する.
症例:81歳, 男性, 平成13年8月頃乳頭直下にしこりを触れたため同年9月に近医受診, 右乳頭下に1cm大の球形, 表面平滑, 皮膚および大胸筋に癒着のない硬い腫瘤を触知した. 穿刺細胞診では清浄な背景に大小乳頭状集塊が多数みられ, 核は類円形でそろっており, 核の突出像は認められないが集塊の周りに間質細胞がないことより, 組織型は不明ながら悪性が疑われたため, 腫瘤の摘出術が施行された. 組織像では10~50個ほどの細胞によって構成される集塊が, 1層の間質によって網目状に境され, 間質との間に隙間を生じていた. 大型集塊には空胞がみられるが腺腔形成はなく, 核が集塊から突出する所見もなく, IMPと診断された.
結論:IMPはいまだ報告例の少ない症例で, しかも男性の発症はきわめて希少である. 穿刺吸引細胞診が本症の早期診断にきわめて有用と思われた.