日本臨床細胞学会雑誌
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Xanthomatous meningiomaの1例
術中迅速診断における細胞診の有用性
佐藤 信也鍋島 一樹大野 招伸日野浦 雄之横上 聖貴宮原 大作
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2003 年 42 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

背景:Xanthomatous meningiomaは髄膜腫の亜型であるmetaplastic meningiomaに分類される腫瘍の一つである.今回, われわれは術中迅速病理検査において, 凍結組織標本のみでは診断に苦慮した本症例を経験したので, その特徴ある細胞像を中心に報告する.
症例:57歳, 男性.右後頭部痛を自覚し, 脳神経外科を受診.頭部MRIで脳腫瘍を指摘された.腫瘍は右運動野-前運動野に存在する脳実質外腫瘍で, 臨床的に髄膜腫が最も考えられたが, 診断確定のため術中病理検査が施行された.凍結切片では, 明るくぬけた背景に核と血管だけが目立ち, 髄膜腫の診断は困難であった.しかし細胞診標本では, 腫瘍細胞は集塊状に出現し, 一部に渦巻き状配列を認めた.核は小型で類円形, 大小不同やクロマチンの異常増量は認めなかった.脳実質外腫瘍で上皮様形態を示し, 髄膜腫に相当する細胞所見であった.さらにsmearの詳細な観察では, 細胞質が大小空胞で充満した泡沫状細胞が細胞集塊の内部に多数認められた.術後の組織標本では, 小型類円形核と泡沫状の細胞質を有する細胞が豊富な血管を伴ってみられ, 脳実質内への浸潤は認めなかった.特殊染色と免疫染色結果を含め, xanthomatous meningiomaと診断した.
結論:泡沫状変化が目立つ本腫瘍においても, 細胞診標本では髄膜腫の特徴は保たれており, 詳細な観察によって, この組織亜型の推定は可能である.

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