日本臨床細胞学会雑誌
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ダグラス窩転移を起こした悪性褐色細胞腫の1例
木村 祐子神田 聡子高橋 奈菜子樋田 一英高松 潔矢島 正純西川 俊郎太田 博明
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2003 年 42 巻 4 号 p. 310-313

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抄録

背景:悪性褐色細胞腫の骨盤内再発はきわめてまれである. 今回われわれは, 原発腫瘍摘出11年後にダグラス窩に再発した悪性褐色細胞腫の1例を経験したので報告する.
症例:48歳, 女性. 右副腎褐色細胞腫にて右副腎摘出術施行. 11年後に肝転移を認め肝部分切除術が施行されたが, カテコールアミン高値が持続し, 画像診断にてダグラス窩に腫瘤をめたため, 腫瘤摘出術を施行した. 摘出術後, 血圧, カテコールアミン値はすみやかに低下した. 摘出腫瘤の捺印標本には大小不同の目立つ異型細胞が多数みられ, 細胞質は微細顆粒状であった. 核クロマチンは増量し, 大型の核小体が1ないし数個認められた. 病理組織学的検索では, 付属器表面とダグラス窩に限局した転移と, 子宮筋層内への浸潤を認めた.
結論:細胞診による褐色細胞腫の良・悪判定はきわめて困難で, 良性腫瘍であってもその異型性の強さから癌や肉腫と誤診されることもまれではない. 本症例は, 原発巣摘出11年後に起こったダグラス窩転移であったが, 細胞学的にも褐色細胞腫の特徴を示していた.

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