日本臨床細胞学会雑誌
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卵管原発癌肉腫の1例
森 裕紀子松本 直樹鈴木 啓太郎田部 宏西井 寛渡辺 明彦落合 和彦田中 忠夫
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2004 年 43 巻 1 号 p. 29-32

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抄録

背景:卵管癌は術前診断が5%と低いまれな婦人科腫瘍である. 特徴的な症状や検査所見に乏しいため術前診断が困難である. 繰り返し行った子宮内膜細胞診が陽性であり細胞診と画像診断により術前に卵管悪性腫瘍を疑った卵管原発癌肉腫の1例を経験したので報告する.
症例:49歳, 0経妊0経産, 不正出血にて初診となる. 初診時, 右卵管留膿腫を認めたが, 子宮腟部, 子宮内膜細胞診は陰性であった. 骨盤内腹膜炎に関しては抗生剤投与により容易に軽快した. 不正出血が続くため, 繰り返し細胞診を施行したところ3回目の子宮内膜細胞診はclass Vで腺癌を疑った. 子宮内膜組織診は陰性で, CT, 経膣超音波で骨盤腫瘍を認めたため卵管癌と術前診断した. 内性器全摘出術+骨盤リンパ節郭清術+大網切除術を施行した. 病理診断は卵管癌肉腫 (悪性上皮成分: 類内膜腺癌, 肉腫成分: 平滑筋肉腫) pT3cN1M0, FIGO IIIc期であった. 術後TN (Taxol 180mg/m2, NDP100mg/body) 療法を6コース行い術後11ヵ月再発徴候を認めない.
結論:閉経後の婦人が不正出血を認めた場合に, 子宮内膜細胞診を繰り返し行うことおよび画像診断は卵管の悪性腫瘍の診断において重要である.

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