日本臨床細胞学会雑誌
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腹膜炎症状で発生した腹膜悪性中皮腫の1例
榎本 明美根津 幸穂森野 咲子小濃 啓子河野 哲也山田 茂樹今野 良
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2006 年 45 巻 5 号 p. 283-287

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抄録

背景: 腹水細胞診で悪性中皮腫を診断するのは難しいといわれる. われわれは, 腹水細胞診が診断の重要な手がかりとなった1例を経験したので報告する.症例: 79歳, 女性. 22歳より約10年間の冷蔵庫製作従事歴あり. 41歳時に子宮摘出後, コバルト治療の既往があるが, 診断や治療の詳細は記録が処分されており不明である. 右下腹部を中心とした腹膜炎症状にて受診時, 腹水を指摘された. 血液検査では白血球数やCRP上昇がみられた. 超音波検査, CT, MRIでは腹水以外の病変を認めず, 上部・下部消化管内視鏡検査でも異常がなかった. その後, 抗生物質の点滴で症状と血1液検査データの改善が繰り返されたため, 診断に難渋した. しかし, 腹水穿刺細胞診で異型のある中皮細胞を認め, PAS染色やcalretininなどの免疫細胞学的染色を追加し, 悪性中皮腫疑いと診断した. その後, 開腹手術を行い, 生検組織で腹膜悪性中皮腫 (上皮型) と診断した.結論:腹膜悪性中皮腫を腹水細胞診で診断するのは難しいとされるが, 細胞診において出現細胞の注意深い観察と, 免疫組織化学的染色を追加検討することで診断の手がかりを得ることができた.

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