2004 年 18 巻 1 号 p. 25-35
要 旨
本研究の目的は,化学療法を初めて受ける肺がん患者の治療前・治療中のコーピングを明らかにすることである.方法は,化学療法を初めて受けることが予定されている20歳以上の肺がん患者9名を対象に面接・参加観察を行った.その結果,治療前は『化学療法の情報を得る』『化学療法の情報を吟味する』『身体をよい状態に保つ』など6つの問題中心型と『気分転換を図る』『化学療法から逃避する』『楽観的な見通しを持つ』など5つの情動中心型コーピングが用いられていた.治療中は『抗がん剤の副作用に取り組む』『身体をよい状態に保つ』『家族の疲労・気持ちに配慮する』など8つの問題中心型と『気分転換を図る』『化学療法から逃避する』『副作用の発現をあきらめる』など5つの情動中心型コーピングが用いられていた.両時期を比較すると『化学療法の情報を吟味する』『楽観的な見通しを持つ』は治療前のみに,『点滴がうまくいくように対応する』『家族の疲労・気持ちに配慮する』『病室環境を調整する』『副作用の発現をあきらめる』は治療中のみに用いられていた.
以上から治療を継続するためには,治療前は,患者に必要な情報を提供する,患者が治療を受けるという現実の問題に取り組み,積極的な姿勢を持つための支援,治療中は家族を含めた援助,化学療法の副作用対策などの看護介入が必要であることが示唆された.