日本がん看護学会誌
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原著
無治療の前立腺がんとともに生きる人々の体験と看護支援のあり方の検討
芦沢 佳津美井上 智子
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2007 年 21 巻 1 号 p. 22-30

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抄録

要 旨

前立腺がんは,PSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)スクリーニングによる早期発見が進められている一方,早期で悪性度が低い場合,無治療経過観察(watchful waiting:待機療法)という選択肢がある.本研究の目的は,無治療経過観察中の前立腺がんをもって生きる人々の体験を明らかにし,看護支援のあり方について示唆を得ることである.

13名の対象者に,半構成的面接法を用いてその人にとっての無治療の前立腺がんとともに生きる意味についてデータ収集した.分析は,Colaizziの現象学的分析方法を参考に質的帰納的に行った.

分析の結果,無治療の前立腺がんとともに生きることの本質的要素として,「診断の受けとめ」「現時点での治療選択に対する認識」「将来の不確かさとPSA値に翻弄される思い」「自分なりに病気に取り組む姿勢」「主治医への信頼と思い」「周囲を取り巻く人々への思い」の6つが導き出された.これらの本質的要素の関連性を図式化し,「無治療の前立腺がんとともに生きる人々の体験の構造図」とした.

それぞれの本質的要素についての個人の認識を知ることで,個別性に基づいた支援の方向性がみえてくる.周囲に対し沈黙する男性たちを見守り,必要なときに必要な人からの支援を得られるよう調整する看護のあり方を考えることの重要性が示唆された.

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2007 一般社団法人 日本がん看護学会
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