日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
原著
化学療法を受けながら転移や増悪を体験したがん患者の治療継続過程における情緒的反応と看護支援の検討
瀬山 留加神田 清子
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 21 巻 1 号 p. 31-39

詳細
抄録

要 旨

本研究の目的は,化学療法を受けながら転移や増悪を体験した消化器がん患者の治療継続における情緒的反応を明らかにし,看護支援の検討を行うことである.

参加観察法,および半構成的面接法により対象者10名からデータ収集を行い,質的帰納的手法を用いて分析を行った.

その結果,情緒的反応の過程には,局面1【期待やためらいの狭間で化学療法を始める】,局面2【生と副作用のバランスを計りながら化学療法を継続する】,局面3【がんの悪化で心が乱れる】,局面4【がんと向き合う姿勢を整え直す】が存在し,一連の情緒的反応のタイプとしては,『感情貫き型』『感情統制型』『体験感情順応型』『ジレンマ型』の4つが明らかとなった.

化学療法を受けながら転移や増悪を体験した消化器がん患者の情緒的反応過程では,すべての局面において治療継続という同一の意思決定を行っていても,「化学療法を継続すること」に対する意味づけには個々に相違がみられた.また,意思決定における患者の主体性は,個々の内省と外的環境などにより違いが現れると考察された.

がんの進行に伴う治療についての患者の意思決定に関連した看護支援としては,未来への不確実性に苦しむ患者に対して時を得た介入が可能となるよう,医療チームにおける看護師の役割を確立し,初期治療が提示されるときから患者や家族に関わることが重要であると示唆された.

著者関連情報
2007 一般社団法人 日本がん看護学会
前の記事 次の記事
feedback
Top