2007 年 21 巻 1 号 p. 48-56
要 旨
本研究の目的は造血器腫瘍患者がたどる発症から造血幹細胞移植後の生活に至るまでの病みの体験を明らかにし,その体験に即した看護援助への示唆を得ることである.罹病期間5年以内の8名の造血器腫瘍患者を対象に半構成的面接を行い,ライフヒストリー法により分析した.
対象者によって語られた発症から現在に至るまでの病みの体験として《症状を軽くみる時期》,《重大な病気を疑う時期》,《死ぬ病気にかかり衝撃・混乱ととともに死の不安が生じる時期》,《生きられるという希望が芽生え闘病意欲が生じる時期》,《繰り返される治療に身体的・精神的に弱くなるが生きるために治療を継続する時期》,《造血幹細胞移植に伴う身体的・精神的苦痛によって死の不安が再び強くなる時期》,《再発の不安の中で新たな生活を構築する時期》の7つの局面が導き出された.これにより,今まで部分的に取り上げられることの多かった発症から移植後の生活に至るまでの造血器腫瘍患者の心理過程を統合することができた.
そして,造血器腫瘍患者が過去にどういう心理過程を経てきたのか,今後どのような心理過程をたどるのかを予測することができ,患者の時期を見据えた関わりが可能になると考える.