2009 年 23 巻 1 号 p. 44-52
要 旨
本研究は,喉頭全摘出術を受ける選択をした患者が,手術直前の段階で自己の置かれている状況をどのように認識しているかを明らかにすることを目的とした.データは喉頭全摘出術の目的で入院した患者5名への参加観察と半構成的面接により収集し,以下の手順で分析した.①自己の置かれている状況に対する認識や評価についての内容を文脈を踏まえ簡潔な一文にまとめる,②個人データの整理:類似した内容の文を集め,カテゴリー間の関連を見ながら表題をつける,③個人のデータが整理された後,全員の内容をまとめ,共通性のあるカテゴリーに表題をつける.
分析の結果,【喉頭摘出に至ることの必然性】,【納得できず受け入れがたい現実】,【喉頭を取ってしまうことが最善である願い】,【生き続ける可能性を与えられた自己】の4つのカテゴリーが明らかとなり,喉頭がんで失声までも負う手術を受けることに不本意さを感じながら,それが最善と認識し向き合おうとしていることが明らかとなった.看護においては,患者が手術を納得したと思われる表現をしても,実際は納得できずためらいを感じていることを理解することが必要である.