日本がん看護学会誌
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研究報告
ホスピスで療養するがんサバイバーの生活の豊かさとその主体的営み
酒井 篤子稲吉 光子
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2009 年 23 巻 1 号 p. 70-81

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抄録

要 旨

本研究の目的は,ホスピスで療養するがんサバイバーにとっての生活の豊かさとはどのようなものであるか,さらに,彼らは終末期の生活の中で自らの生活の豊かさをどのように変化させているかを明らかにすることである.研究参加に同意を得た4名のホスピスで療養するがんサバイバーを対象として,半構成面接法と診療カルテによる付加的情報をもちいてデータ収集を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.

その結果,生活の豊かさの要素として,【人生に価値を見出す】,【他者とのつながりを深める】,【内的なまとまりをつける】,【変化との釣り合いをとる】,【意のままに生きる】,【困難と折り合いをつける】の6主要カテゴリーが明らかになった.さらに,生活の豊かさの変化の要素として,{豊さの実現のために感受的な姿勢をもつ},{豊さを取り込むための心的エネルギーを内的な方向へ向ける},{日常的な生活を重視することへ豊さの価値基準を移す},{状況と調和して流動的に豊さを創り上げる}の4要素が明らかになった.

ホスピスで療養するがんサバイバーにとっての生活の豊かさは,希望を見出す要素との類似性があったが,内的なまとまりをつけることにおいて安らぎの空間を得ることが重要視されている点に特徴があった.さらに,生活の豊かさの変化は,がんサバイバーの生活の豊かさの発展性であり,それは彼らの自己成長のプロセスであると考えられた.

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2009 一般社団法人 日本がん看護学会
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