2009 年 23 巻 2 号 p. 33-41
要 旨
本研究は,乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知と客観的評価の関連を明らかにし,障害の予防改善に向けた介入の有効性を検証する測定方法の検討を目的とした.術後1年以内で外来通院中の乳がん体験者62名(平均年齢55.9±11.9歳)に,乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度の6項目を用いた質問紙調査と上肢機能(前腕上腕周径・肩関節可動域・握力)の測定を行った.その結果,腫脹と筋力低下の発症率は主観的認知が,肩関節可動域の縮少は客観的評価が高かった.腫脹,肩関節可動域の縮少,握力低下に対する主観的認知と客観的評価の間には「手術した側の腕を肘を曲げずに横に広げて耳の高さまであがらない」と外転差(rs=.25;p<.05),「手術した側の腕を肘を曲げずに横に広げて後ろにそらせない」と水平伸展差(rs=.28;p<.05)に有意な正の相関がみられた.しかし,腕周径,肩関節屈曲,握力に関しては測定方法間に相関がみられなかった.また,客観的評価で症状ありに対して主観的認知なしの割合は50~78.1%,客観的評価で症状なしに対して主観的認知ありの割合は11.4~34.7%であった.このことは,乳がん術後上肢機能障害のアセスメントには,主観的認知と客観的評価の併用が有用であることを示唆している.