日本がん看護学会誌
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研究報告
がん患者のリンパ浮腫ケアに携わるセラピストの技術
野戸 結花北島 麻衣子
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2010 年 24 巻 3 号 p. 23-32

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抄録

要 旨

本研究の目的は,がん患者のリンパ浮腫ケアに携わるセラピストが複合的理学療法実施の場面でどのような技術を用いているのかを明らかにすることである.データはリンパ浮腫患者に対し複合的理学療法を行う臨床施設に勤務する医療リンパドレナージセラピスト11名への半構成的面接により収集し,質的帰納的に分析した.結果,がん患者のリンパ浮腫ケアに携わるセラピストの技術として,リンパ浮腫を軽減する技術である【時間軸上のその人をとらえる】,【むくみという体験を全体でとらえる】,【最大の効果を得るための方策を探る】,【掌の下で起こっていることを見透かす】と,セルフケアを支える技術である【セルフケアに気持ちを開く】,【セルフケアの継続を支える】,【伴走者としての距離感をつかむ】が見出された.本研究の対象者となったセラピストは,リンパ浮腫患者の身体症状はもちろん,主観的体験に関心を寄せて患者を包括的にとらえ,経験を重ねることにより熟練した技術でケアを行っていた.さらに,患者の気持ちがセルフケアに向かって開かれるきっかけをつくり精神的に支え,セルフケアの効果的な継続と自立を促していた.リンパ浮腫はいったん発症すると慢性的な経過をたどることから,リンパ浮腫を適切にケアし症状緩和を図ると同時に,患者がリンパ浮腫であることを自分のこととして受け止め,必要なセルフケア行動を獲得し,継続していけるようにサポートする必要があることが示唆された.

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2010 一般社団法人 日本がん看護学会
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