日本がん看護学会誌
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研究報告
がんサロンにおけるボランティアのピアサポーターとしての体験のプロセス
佐藤 恵子
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2012 年 26 巻 3 号 p. 81-90

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抄録

要 旨

近年,がん患者・家族の支援の場としてがんサロンが設けられてきている.今回,サロンにボランティアとして1年以上参加しているがん患者・家族に対し,ピアサポーターとしての体験の,変化のプロセスを明らかにすることを目的とした.サロンに1年以上参加したボランティア7名に半構造化面接を行い,サロンの体験に関連して語られた思いを抽出した.分析は質的帰納的方法で行った.結果,ボランティアの体験のプロセスは【自分のがん体験】,【自分への癒し】,【ピアサポーターとしての役割意識】で構成された.ボランティアは,【ピアサポーターとしての役割意識】により,立場の違いや対応への緊張感など,《対応の困難感》を感じた.一方で,【自分のがん体験】が根底にあり,サロンで共感し合えることで《自分の気持ちの安定》が得られた.そのことが《他者の受容》につながり,訪問者が聴くだけでも気持ちが落ち着く体験から,《傾聴を意識》するようになった.《対応の困難感》は,《傾聴を意識》し,自分たちのできる限界を《割り切る》,同じがん体験者として共感し合えることで,どんな訪問者にも対応できるという《対応への自信》に変化した.さらに,訪問者・リピーターが増加し,《サロンは役割を果たしている》と実感できるようになった.このプロセスにより,ボランティアは自分への自信を得てピアサポーターとしての成長を自覚し,《自己の存在意味の維持・強化》という【自分への癒し】となった.しかし,現状への葛藤から,《進歩への模索》が繰り返された.医療者は,ボランティアと《進歩への模索》を繰り返しながら,パートナーとして存在し続けることが,サロン発展の原動力になると考えられる.

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2012 一般社団法人 日本がん看護学会
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