日本がん看護学会誌
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26 巻, 3 号
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原著
  • 南川 雅子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 4-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,食道発声法の獲得を促すケアモデルを喉頭全摘出術により失声した患者に適用し,ケアモデルの有効性を評価することである.研究デザインは不等価コントロール群事前事後テストデザインとした.対象は,食道発声法訓練(以下,訓練)を受けて1週間程度経過したケアモデル適用群(以下,適用群)10名,非適用群12名であった.適用群は訓練を開始して1週間程度経過時,およびその後1カ月間ケアモデルを実施した後の2回,非適用群はケアモデルを実施せず,適用群と同様の時期に2回,訓練に対するストレスとコーピング,自己練習状況,発声音数,心理的影響要因,心理的適応状態に関するデータ収集を行った.分析はt検定,対応のあるt検定,反復測定による分散分析を行った.結果,「発声音数」に介入と調査時期の交互作用がみられた.これは,対象者が頸部や肩をリラックスさせるイメージ法や筋弛緩法を行うことで,食道内への空気の取り込みが容易になり,発声しやすくなったためと思われる.また,対象者が研究者と話し合うことにより,自宅での自己練習方法を明確にしたうえで自己練習できたことも「発声音数」の向上につながったのではないかと思われる.「練習頻度」,「自己練習時間」,「相互支援型コーピング」は調査時期による主効果がみられた.これらについては,食道発声教室において訓練を継続することにより向上したと考えられる.

研究報告
  • 井上 水絵, 佐藤 和佳子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 14-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    目的:本研究は,回復期にある婦人科がん術後患者におけるQOLの実態と関連要因を明らかにすることを目的とした.

    方法:婦人科外来患者112名を対象に,基本属性,治療状況,QOL尺度(FACT‒G),更年期症状(SMI),抑うつ(SDS),夫婦関係満足度,ソーシャルサポートで構成される調査用紙を用い聞き取り調査を行った.分析は記述統計を求め,FACT‒Gについて比較および相関分析を行ったうえ,関連の認められた項目について重回帰分析を行った.

    結果:多発がんを除く110名を分析対象とした(有効回答率98.2%).FACT‒Gは平均86.4±11.6点であり,関連が認められたのは配偶者・パートナーの有無,経済状況,社会役割変化,排尿障害の有無,排便障害の有無,SMI,SDS,夫婦関係満足度,ソーシャルサポートであった.重回帰分析の結果,ソーシャルサポート(β=-.42,p<.001)がQOLに肯定的な影響,抑うつ(β=-.51,p<.001)がQOLに否定的な影響を及ぼすことが明らかになった.

    結論:回復期にある婦人科がん術後患者のQOL向上のためには,ソーシャルサポートの強化と抑うつの予防,早期発見と対処が重要な看護支援であることが示唆された.

  • 平岡 玲子, 佐藤 禮子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 23-33
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん患者のペインマネジメントに対する取り組みの様相を明らかにし,主体的取り組みを促進する看護援助を検討することである.がんによる痛みを体験している患者7名を対象に,面接調査法と参加観察法を用いてデータ収集し,質的帰納的に分析した.その結果,痛みのある患者が直面する困難には,「痛み自体がもたらす問題」「鎮痛薬使用の問題」「除痛援助に対する問題」などがあった.また,困難に対する取り組みには,その結果から困難が解決された取り組みと困難が解決されなかった取り組みがあった.困難が解決された取り組みから,痛みのあるがん患者は,痛みの原因と痛み治療や除痛援助の効果を自己吟味し,その結果をもとに自らの意思を働かせて行動する自己指示的取り組みを行っていること,この行動には,患者自身の痛みの理解と治療法に関する知識が必要であり,さらに患者の取り組みを後押しし結果を保証する医療者の存在が重要であることが明らかになった.これらの結果から,がん患者の主体的取り組みを促進するための看護援助として,疼痛緩和に関する知識を提供し患者自身の痛みに関する学びを強化する教育支援,患者が自己指示的行動を志向できるようなコミュニケーションと取り組みへの継続的な支援が必要であることが示唆された.

  • 菅原 よしえ, 森 一恵
    2012 年 26 巻 3 号 p. 34-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は乳がん患者の診断から初回治療終了までの配偶者の認識と対処行動を明らかにすることである.研究方法は,乳がんの診断を受け初回治療終了までの患者の配偶者6名を対象に半構成的な質問による面接法を用いて行った.分析方法は,面接内容から逐語録を作成し,妻の乳がん診断から初回治療終了までの配偶者の認識と対処行動について内容分析を行った.研究者の所属施設の倫理委員会の承認を得て行った.分析の結果,乳がん患者の診断から初回治療終了までの配偶者の認識として≪乳がんの診断は思いがけないショックな出来事≫≪乳がんは,病状が初期で治療可能ならば深刻に考えない≫≪乳がんは再発や転移が心配であり,医師による専門的な治療が必要である≫≪妻が元気かどうかにより夫の気持ちに影響する≫≪乳がんによる女性特有のことについて夫は話しにくい≫など8カテゴリーが抽出された.対処行動として,≪病気に関する情報収集をする≫≪妻の気持ちを安定させるために努力する≫など4カテゴリーが抽出された.乳がん患者の配偶者は,乳がん罹患や治療に伴う妻の変化においてわからないことや察しきれないことに戸惑いを感じながら,見守り刺激しないよう努力し,夫として妻をサポートする役割を果たしたいと模索している姿が明らかになった.配偶者は乳がん患者である妻をサポートする存在として意識しており,配偶者が妻をサポートできる能力を強化する援助の必要性が示唆された.

  • 北野 華奈恵, 長谷川 智子, 上原 佳子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 44-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,混合病棟で働く看護師からみた終末期にあるがん患者と,非終末期にあるがん患者に対する認識(患者に対する印象と心理的距離感)と感情,およびそれぞれの患者に対して行った感情労働の違いを明らかにすることである.

    対象は終末期患者と非終末期患者を受け持ったことがあり,終末期患者と非終末期患者が混在する病棟で勤務している臨床経験13カ月以上の女性看護師567名とし,自記式留置質問紙法にて調査を実施した.対象看護師には,過去に受け持ったことがある,あるいは現在受け持っている終末期患者と非終末期患者それぞれに対する認識と看護師の感情,および各患者に対して行った感情労働について各回答を求めた.

    その結果,372名の看護師より回答が得られた.終末期患者に対する看護師の印象の「個人的親しみやすさ」が増すほど,「心理的距離感」は遠くなる傾向がみられ,非終末期患者とは逆の結果となった.このことから,看護師は終末期患者との親密な関係を築くほど,患者への死に対する思いの葛藤があることが示唆された.また,終末期患者に対して行う感情労働をみると,非終末期患者に比べ,下位項目の「感情労働総合得点」「表出抑制」および「ケアの表現」の感情労働量が有意に多かった(p<.001).このことから,終末期患者をケアする看護師は,患者の苦痛が軽減できるような気づかいと共感的態度に加え,自らの感情を抑えながら笑顔をつくりケアを提供していることが示唆された.

  • 大園 康文, 石井 容子, 宮下 光令
    2012 年 26 巻 3 号 p. 52-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,訪問看護師からみた終末期がん患者の在宅療養に関する問題と,その解決策を明らかにすることである.対象は関東の訪問看護ステーションに常勤勤務する訪問看護師25名で,過去1年間に終末期がん患者を3件以上担当した者とした.調査対象者に,調査目的・方法・調査への参加は自由意思で調査に協力しないことで不利益は生じないことなどを,口頭と文書にて説明した.結果は,約半数が訪問看護師経験10年以上であり,19名が10件以上のがん患者に関わっていた.半構造化面接により終末期がん患者の在宅療養に関する問題が抽出され,【医師に関する問題】【家族に関する問題】【療養環境に関する問題】【看護師に関する問題】【訪問看護師の負担感に関する問題】【他職種に関する問題】【患者に関する問題】【連携に関する問題】【訪問看護ステーションの運営に関する問題】【関係者間の意見調整に関する問題】【利用者の経済的負担に関する問題】の11カテゴリーに分類された.さらにそれぞれの問題に対して,訪問看護師にできる解決策も明らかにした.問題を明確にしその解決策を考えることで,質の高い終末期在宅ケアの提供につながると考える.質の高い終末期在宅ケアが提供できれば,結果として患者・家族の満足につながると考える.

  • 安永 浩子, 渡邊 智子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 61-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    【目的】がん患者と家族成員のパートナーシップとQOLとの関連,パートナーシップに及ぼす影響要因を明らかにする.

    【方法】通院または短期入院のがん患者と家族成員28組(56名)に対し構造化面接を行った.調査項目は,患者と家族成員両者に特性,WHOQOL26,家族コミュニケーション尺度,患者にMental Adjustment to Cancer scale,家族成員にCaregiver Quality of Life Index-Cancerを用い,パートナーシップの指標は患者と家族成員の「肯定的コミュニケーション得点の和」とした.分析はPearsonの積率相関係数と重回帰分析(p<0.05)で行った.

    【結果】分析対象者は25組(50名),患者は全員化学療法を受けていた.分析の結果,パートナーシップは患者のQOL(r=0.504,p<0.05),家族成員のQOL(r=0.615,p<0.01) と関連し,患者のQOLと家族成員のQOLは関連(r=0.626,p<0.001)することが明らかとなった.パートナーシップに及ぼす影響要因は「患者の悲観」「家族成員の心理的負担感」「患者の否定的コミュニケーション」「家族成員の否定的コミュニケーション」「家族成員のサポートの有無」であった.

    【考察】がん患者と家族成員のパートナーシップとQOLとの関連を明らかにすることで,家族をシステムとして捉える看護実践の重要性を示した.パートナーシップを促進するためには,患者の悲観,家族成員の心理的負担感に対する「ありのままを受け止める支持的共感的介入」と「コミュニケーションをつなぐ洞察力」を磨き,「家族成員のサポート体制の構築」が必要である.

  • 青柳 道子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 71-80
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん患者の配偶者のソーシャル・サポートに関する体験についてネガティブな側面も含めて全体像を明らかにし,がん患者の配偶者の精神的健康を促進する看護の手がかりを得ることである.がん患者の配偶者13名を対象に,半構造化面接法によりデータを収集し,質的帰納的に分析を行った.その結果,がん患者の配偶者のソーシャル・サポートの体験は【サポートの必要性の自覚】【サポートを受けることへの躊躇】【サポートを期待する相手の吟味】【サポートの取捨選択】【受けたサポートの有益性の認識】【受けたサポートによる感情の生起】【関係のもち方によるサポートの調整】の7カテゴリーに集約された.これらの体験において,配偶者はサポートを受けることを躊躇し,サポートを受けないことや,有益でないサポートを受けていることが明らかになった.看護への示唆として,①配偶者の言いづらさを理解し,察してサポートを提案,他者に代弁する,②家族内のサポート力を高める働きかけと関係調整,③サポート不足の配偶者に潜在的サポート提供者の掘り起こしや社会資源の紹介をする,④配偶者への有益なサポート提供であると認識し,患者のケアを行う,⑤有益でないサポート提供者との仲立ちや,有益でないサポートへの配偶者の対応力を高める,が得られた.

  • 佐藤 恵子
    2012 年 26 巻 3 号 p. 81-90
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/12/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    近年,がん患者・家族の支援の場としてがんサロンが設けられてきている.今回,サロンにボランティアとして1年以上参加しているがん患者・家族に対し,ピアサポーターとしての体験の,変化のプロセスを明らかにすることを目的とした.サロンに1年以上参加したボランティア7名に半構造化面接を行い,サロンの体験に関連して語られた思いを抽出した.分析は質的帰納的方法で行った.結果,ボランティアの体験のプロセスは【自分のがん体験】,【自分への癒し】,【ピアサポーターとしての役割意識】で構成された.ボランティアは,【ピアサポーターとしての役割意識】により,立場の違いや対応への緊張感など,《対応の困難感》を感じた.一方で,【自分のがん体験】が根底にあり,サロンで共感し合えることで《自分の気持ちの安定》が得られた.そのことが《他者の受容》につながり,訪問者が聴くだけでも気持ちが落ち着く体験から,《傾聴を意識》するようになった.《対応の困難感》は,《傾聴を意識》し,自分たちのできる限界を《割り切る》,同じがん体験者として共感し合えることで,どんな訪問者にも対応できるという《対応への自信》に変化した.さらに,訪問者・リピーターが増加し,《サロンは役割を果たしている》と実感できるようになった.このプロセスにより,ボランティアは自分への自信を得てピアサポーターとしての成長を自覚し,《自己の存在意味の維持・強化》という【自分への癒し】となった.しかし,現状への葛藤から,《進歩への模索》が繰り返された.医療者は,ボランティアと《進歩への模索》を繰り返しながら,パートナーとして存在し続けることが,サロン発展の原動力になると考えられる.

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