日本がん看護学会誌
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原著
進行食道がんのために化学放射線療法を受けた初老男性患者のがんを生き抜くプロセス─食道がんを超えて生きる知恵を生み出す─
今泉 郷子
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2013 年 27 巻 3 号 p. 5-13

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抄録

要 旨

目的は,進行食道がんのために化学放射線療法を受けた初老の男性食道がん患者が,いかにして食道がんを生き抜いていくか,そのプロセスを明らかにすることである.対象は,進行食道がんのために化学放射線療法を受けた60~70歳代の男性食道がん患者11名で,半構成的面接にてデータを収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した.

結果,食道がんの脅威の中を生きるだけではなく,食道がんを超えて生きる知恵を生み出すプロセスが示された.対象者らは,食道がんを告げられ,【食道がんの脅威の中を生きる】という衝撃の中を,自分の[からだと対話する]ことによって【食道がんを生き抜くために自分が動き出し】ていた.このことが【食道がんの脅威の中を生きる】ことを脱して,【食道がんを超えて自分の人生を生きる】ことへと,プロセス全体を大きく転換させていた.そして対象者らは,古い価値観やこだわりを捨て[新しいペースをつくり出]し,がんになった人生であっても,自分の人生を生き抜いてきた証として人生の意味を見いだした.そして[自分自身に誇りをも]ち,【がんを超えて自分の人生を生き】ようと変化していた.

食道がんという疾患や侵襲の強い治療に伴う障害を改善し,対処するだけに留まらず,がんサバイバーシップの観点に立つがん看護実践に向けて,がんを超えて生きる力を支えていくこと,特に自分のからだと対話しながら,自分で動き出すという転換点に焦点を当てた看護を探究することが看護実践への示唆となった.

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2013 一般社団法人 日本がん看護学会
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