日本がん看護学会誌
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原著
術後肺がん患者の退院時から術後6カ月までの身体的不快症状の実態
板東 孝枝雄西 智恵美今井 芳枝
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2015 年 29 巻 3 号 p. 18-28

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抄録

要 旨 本研究の目的は,肺がん手術後の身体的不快症状の実態とそれらが生活に及ぼす影響について,退院時から術後6 カ月までの経時的推移を明らかにすることである.術後肺がん患者41 名(平均年齢67.0 歳)を対象とし,自記記入式質問紙法と診療録からデータ収集を行った.分析の結果,肺がん手術後6 カ月を経過しても約6 割の患者が2 つ以上の不快症状を抱えていた.創部に関連する不快症状は,退院時は創部表面の訴えが最も多く,術後1 カ月以降は創部内部の訴えへと変化した.創部以外の不快症状は,術後1 カ月以降では半数以上の患者に術後の息苦しさが出現しており,経時的変化はみられなかったが,術式や喫煙経験により日常生活への影響の程度に関連がみられた.また術後1 カ月が経過しても,術後術側急性肩部不快症状が約17%の患者に存在し,術後6 カ月が経過しても約半数の患者に咳嗽が出現していた.以上より,患者へ術後出現する可能性のある不快症状の回復過程やその機序に関する情報提供を行い,患者自身に不快症状に対するセルフモニタリングの実施を促し,自らの症状に対する認識を深めることで,セルフケア支援へと繋げる必要がある.今後は,患者の不快症状体験を加味した周手術期肺がん看護プログラム開発の必要性が示唆された.

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