2018 年 32 巻 論文ID: 31_miyahara_20180117
要 旨
研究目的は,がん終末期にある患者の最期が,“患者とその家族にとって意味深い体験”となることを目指して,研究者と緩和ケア病棟に所属する看護師の協働のもとで,看護師が“患者・家族にとっての意味深いケア環境”として自らを創出していく過程を探求し,その過程を可視化することと,その過程に潜む推進力を明らかにすることであった.
方法は,全体論の見方に立つM. Newman の健康の理論に準拠したミューチュアル・アクションリサーチ(MAR)の手法を用い,実践事例をもとに参加者の内省と自己のケアパターン認識を奨励する「対話の会」を繰り返した.データは,会の逐語録,研究者と参加者のジャーナル,研究者のフィールドノートであった.分析方法は,Newman の健康の理論を踏まえ,研究目的に即して関連する部分の意味を抽出し,過程として眺め,意味づけた.当該大学と医療施設で倫理的側面の審査・承認を受けた.
参加者は,緩和ケア病棟における看護師17 名であった.会は20 回開催され,参加者の延べ数は126 名,取り上げられた事例は18 事例であった.
本MAR を通して,参加者らの集合的な変化は6 局面を経ながら,らせん状に進化する過程として可視化され,そこに潜む推進力として7 つの要素が明らかとなった.
本研究結果から,看護師らが全体性のパラダイムに準拠したNewman 理論と看護実践のつながりに関心を持ち,ケアの事例について対話を重ね,そこでの学びを実践につなげていくならばMAR は可能であり,類似したらせん状の過程をたどりながら,変化・成長を遂げていくであろうことが示唆された.