日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
原著
緩和ケア病棟入院中の終末期がん患者の家族が 在宅療養移行に向き合うプロセス
小暮 郁恵中西 陽子廣瀬 規代美
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 32 巻 論文ID: 32_kogure_20180118

詳細
抄録

要 旨

本研究の目的は,緩和ケア病棟入院中の終末期がん患者の家族が,在宅療養移行に向き合うプロセスを明らかにし,緩和ケア病棟から在宅療養移行に向けた家族への看護支援の示唆を得ることである.

緩和ケア病棟から在宅療養移行した終末期がん患者の遺族15 名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

分析の結果,緩和ケア病棟入院中の終末期がん患者の家族は,入院時には〈自宅に連れて帰れるか分からない思い〉などさまざまな思いを抱えていたが,いずれの家族も患者の命の期限を意識しながら限られた時間の中で思いを巡らし,〈入院継続と在宅療養を天秤にかけ在宅療養に傾く思い〉を経て〈「今しかない時宜」と在宅療養移行を決意〉していた.その後在宅療養移行日までの短期間において,《医療者のリードによるめまぐるしい在宅療養準備への取り組み》をする中で《在宅でも医療介護専門職者による継続支援が得られる安心感》を得て〈在宅療養に対して少しずつ前向きになる〉ことを経ながら在宅療養移行に至っていた.在宅療養移行を意識した時から《終末期がん患者を在宅で看ることへの不安》を抱きながらも,根底にある〈患者本人の“家に帰りたい願望”を叶えたい思い〉を基盤に〈いつでもこの場所に戻ってこられる安心感〉に支えられながら在宅療養移行に進んでいた.

以上を踏まえ,早期から不安に寄り添い,緩和ケア病棟への再入院の機会を保障し,医療者がリードする在宅療養移行準備の支援の必要性が示唆された.

著者関連情報
2018 一般社団法人 日本がん看護学会
前の記事 次の記事
feedback
Top