日本がん看護学会誌
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原著
乳がん罹患を契機に遺伝性乳がん卵巣がんと診断された女性が乳がんと診断されてからリスク低減手術を終えるまでの体験
大川 恵青木 美紀子有森 直子
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2018 年 32 巻 論文ID: 32_okawa_20180221

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抄録

要 旨

本研究は,乳がんに罹患したことを契機に遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer; HBOC)と診断され,リスク低減手術を選択した女性の体験を明らかにすることを目的としている.

研究協力者5 名に対して半構成的インタビュー調査を行い,そのうち4 名の協力者のデータを質的記述的方法に基づき分析を行った.

分析の結果,乳がんに罹患したことを契機にHBOC と診断され,リスク低減手術を選択した女性の体験は【がんという病気が当事者とその周囲の人に与える影響を実感する】【いつがんに罹患しても慌てないように心構えをしながら生活する】【自分のことよりもがんや遺伝による周囲への影響を心配する】【遺伝子検査結果に抱いていた不安と期待が落胆に変化する】【リスク低減手術に対する葛藤を経て最終的にがんのリスクを減らすことを優先する】などの10 の体験が明らかになった.

協力者らの体験から,リスク低減手術を選択した女性は,乳がんに罹患する前から,長期にわたるがんに対する恐怖心との共存があったこと,リスク低減手術の選択には葛藤が伴っていたことが示され,過去のがん体験に配慮した対象の理解を行うことや適切な情報提供を行うことが,看護として重要であることが示唆された.

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2018 一般社団法人 日本がん看護学会
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