2021 年 35 巻 論文ID: 35_360_hyogo
本研究はBest Supportive Care(BSC)となった終末期肺がん患者の家族の願いを明らかにすることである.対象者はBSCとなった肺がん患者の家族10名とし,インタビューガイドを用いた半構造的面接法を行った.データ分析方法は内容分析を用いた.
結果,急性期病棟でBSCとなった肺がん患者の家族の願いは【やめざるをえないが本当は治療させたかった】【最期くらいは苦しい思いを感じさせずに穏やかな生活を過ごさせてあげたい】【患者が自分の思うように最期を生ききる姿を見届けたい】【今までよく頑張ってきてくれたことへ,ありがとうを伝えたい】の4つのカテゴリーが抽出された.家族は生き続けるための治療ができなかった無念さを抱えつつも,穏やかに過ごしてほしいと願っていることが示されていた.
この根底には,患者を苦痛から解放してあげたいという“患者の安楽を第一に”したい家族の願いが推察できた.根治は手術でしか成しえないことを説明したうえで治療を重ねて弱っていく患者を見続ける療養の日々は,少しずつ患者の死を享受する予期的悲嘆プロセスにもなっていたことが推察された.そして,患者の死を避けることができない現実として捉え,患者が自分らしく最期まで生ききれることを支えるという“残された家族の務め”としての願いが示されていた.家族の務めという願いは,患者の死にとらわれずに,残された時間という先行きに視点を向けさせていたと推察できた.