2024 年 38 巻 論文ID: 38_17_sekine
本研究の目的は,喉頭全摘出後の夫と共に暮らす妻の失声への構えを明らかにすることである.
研究は,質的記述的研究デザインを用い,喉頭全摘出後3カ月を経過している夫の配偶者(妻)5名を対象に,半構成面接法を行い,失声への構えについて分析し,分類した.
結果,喉頭全摘出後の夫と共に暮らす妻の失声への構えには,《失声に対する理解と認識》《手術に向かう準備》を経て,現実を受け止めようと努力する深い心情である《揺るぎのない受け止め》《揺らぐ自身の受け止め》という相反する揺らぎの状態が共存し,両方の思いをかかえて失声への構えが移り行く過程が描かれた.これらは,喉頭摘出術を受ける夫と共に暮らす妻には,夫の失声に対して,これまでの夫婦としての絆や関わりが映し出され,夫を思うがゆえに自分自身の揺らぎに耐えていこうとする構えがあることがわかった.
構えとして抽出された9カテゴリーから,その夫婦としてのつながりに目を向け,夫婦の状況を察すること,先を見据えられるように支援することが重要であることが示唆された.